キューバ大統領の外遊。共産主義の残光はまだ消えません!

マルクス・レーニン主義を掲げる共産党系政党の独裁による社会主義国家は、1990年代の初めに旧ソ連や東ヨーロッパの国々の体制崩壊でほどんど姿を消しましたが、30年近く経った今もなおその看板を下ろさない数少ない国の一つがラテンアメリカのキューバであり東アジアの北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)です。アジアの中国、ベトナム、ラオスなどの国も未だに共産党独裁ですが、市場経済システムを大胆に取り入れ、最近ではマルクスが生きていたらビックリするような拝金主義の国になりつつあります。なお、ラテンアメリカには、今からキューバのような国造りを目指すベネズエラのような異形の国家も存在します。(以下の写真はGranma紙から引用しました。)

さて、6月に就任したディアス・カネル大統領は、早々に同盟国ベネズエラを訪問しマドゥーロ大統領と会談しました。ベネズエラでは1999年にチャベス大統領が現れ、その後崩壊した旧ソ連に代わりキューバの経済的なパトロンになりましたが、今のベネズエラには他国の面倒を見る余裕などありません。

食料品をはじめ生活必需品を輸入するための外貨さえ不足しているキューバは、ベネズエラに代わるパトロン探しに必死になっています。11月1日から約2週間行われたディアス・カネル大統領のベネズエラに続く外遊は、危機的な状況にあるキューバ経済を助けてくれるスポンサー探しが主目的でしたが、未だにイデオロギー闘争に拘っているのか、日本やヨーロッパなど西側の友好国は素通りし、ロシア、北朝鮮、中国、ベトナム、ラオスなどの付き合いやすい「同盟国」が優先されました。

最初の訪問国ロシアでは、ロシアがキューバに武器購入のために50百万ドルを融資することに合意したそうです。キューバが、なぜ今国民生活に緊急に必要の無い武器の購入を優先するのか首を傾げるところです。ロシアとしては、融資金を踏み倒される可能性がありますが、旧ソ連に続いてこの地域で影響力を行使するには、米国と対立するキューバを拠点とするのが得策と考えているのでしょうか。最近ロシアは、鉄道建設などインフラ整備でキューバを積極的に支援していますが、「有事」に備えての戦略と考えるのは想像しすぎでしょうか?

次の訪問国は北朝鮮。金主席自らが空港に出迎え、まさに国を挙げての大歓迎でした。今は、韓国の大統領以外で北朝鮮を公式訪問する物好きな国家元首は世界中にあまりいないと思いますが、地球の裏側からわざわざアジアの最初の訪問国として会いに来てくれた友人への対応は、米国等からの経済政策により世界で孤立する二つの国の「特殊な関係」を象徴していました。両首脳は、両国・両国民の友好関係の一層の発展について合意しましたが、残念ながら今やキューバでも北朝鮮でも、相手のことを理解している国民はほとんどいないでしょう。

次は中国。ラテンアメリカの他の国と同じく、今やキューバにとって中国は輸出入とも最大のパートナーとなっているので、今後のパトロンとして最も期待されるところです。中国のトップはこの頃相当偉くなったと自覚しているのか、日本の首相が行ってもなかなか姿を現しませんでしたが、今回のキューバ大統領の訪問でも共産党の幹部が中心となってアテンドし、本人は最後になってようやく顔を出しました。両国は、科学技術や各種産業分野で協力すること、さらにキューバは中国の「一帯一路」構想を支援することが合意されました。中国は自動車や家電など多くの製品をキューバに輸出していますが、キューバからの代金の支払いが滞っているとの噂もあり、実利主義の中国としては「金の切れ目は縁の切れ目」なので、今後どの程度キューバを支援するつもりなのか不透明です。アジアやアフリカの某国のように、借金が返せない場合は中国が乗り込むような姿勢を示すと、自主独立で内政干渉を嫌うキューバと衝突するリスクもあります。それから、キューバが中国のシルクロード開発を支援するというのも滑稽な話です。

次はベトナム。中国と並んで開放政策により急激に経済成長している「社会主義国」ベトナムは、キューバが政治的にも経済的にもしがらみ無しに付き合える数少ない友好国の一つです。また、共に米帝と戦って連中を追い出したという認識も両国に共通しています。今回の訪問ではいくつかの「商談」が成立したらしいですが、中国と同じくお金を払ってくれないキューバにベトナムがいつまで付き合ってくれるか疑問です。キューバにとってベトナムは大切ですが、ベトナムにとってキューバは大して重要な国ではないでしょう。

外遊の最後はラオス。アジアの最貧国の一つでキューバのパトロンにはなりえないので、政治的なイデオロギーの共有を確認しただけです。ラオスにとっては他のアセアン諸国、中国、日本、欧米との関係が優先するので、キューバに歩み寄られても何もできないでしょう。

外遊を終えたディアス・カネル大統領がハバナに到着すると、キューバの事実上のNO1であるラウルカストロ共産党第一書記自らが、出発時と同じく空港に出向き大統領の労をねぎらいました。共産党がすべてを牛耳る新聞やテレビなど当地のマスコミは、今回の大統領の外遊の「成果」を一斉に伝えていましたが、大部分のキューバ国民は冷めた目で眺めているようです。キューバは相変わらず何も変わりそうにありません。

 

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