「マイ・インターン(The Intern)」の感想と評価(ロバート・デニーロの映画と共に歩んだ40年の人生)

日本では10月10日から公開予定の映画「マイ・インターン」は、パナマで先行上映されています。今日、スペイン語の字幕付きのバージョンで観てきました。

オリジナル版の公式予告編はこちらです。

オリジナル版、スペイン語版、それに日本語版では、映画のタイトルやキャッチ・フレーズが微妙に異なっていて面白いです。

  • オリジナル版 ⇨ The Intern(ザ・インターン) Experience never gets old.(経験は決して年をとらない)
  • スペイン語圏 ⇨ Pasante de Moda(ファッション界のインターン) Nunca es tarde para intentar. (何かするのに遅すぎることはない)
  • 日本語版   ⇨ マイ・インターン アドヴァイス一つで人生は輝く

さて、この映画、私が大ファンであるロバート・デニーロの最新作ということで、前から期待していました。およそのあらすじは以下の通りです。(「映画.com」からの引用を元にしています。

「プラダを着た悪魔」のアン・ハサウェイと名優ロバート・デ・ニーロが共演したハートフルドラマ。ファッションサイトのCEOとして活躍する女性が40歳年上の男性アシスタントとの交流を通して成長していく姿を描いた。ニューヨークに拠点を置く人気ファッションサイトのCEOを務めるジュールス(アン・ハサウェイ)は、仕事と家庭を両立させながら誰もが羨むような人生を歩んでいた。ところがある日、彼女に人生最大の試練が訪れる。そんな折、会社の福祉事業で雇われたシニアインターンのベン(ロバート・デ・ニーロ)が、ジュールスのアシスタントに就く。ジュールスは人生の大先輩であるベンから様々な助言をもらい、次第に心を通わせていく。監督・脚本は「ホリデイ」「恋愛適齢期」のナンシー・マイヤーズ。「セックス・アンド・サ・シティ2」の衣装を手がけたスタッフによる洗練されたファッションも見どころ。

日本語版の公式予告編です。

 

以下は、映画を観ての感想とコメントです。写真はこちらのサイトから引用させていただきました。

♥私、ロバート・デニーロについては、1970年代の「ゴッドファーザーPART2 」(アカデミー助演男優賞)、「タクシードライバー」等の作品から40年来のファンです。アカデミー主演男優賞に輝いた1980年の「レイジングブル」では、現役のボクサー役と20キロ増量してその後の落ちぶれた姿を演じるなど、カメレオンのように姿を変えて主人公になりきるストイックな俳優ですが、今回も期待を裏切りません。「パッチアダムス」等に出演した故ロビン・ウイリアムズが得意としたような、物分かりのいいオヤジ役を見事に演じきっています。

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♥2012年の「レ・ミゼラブル」でアカデミー助演女優賞に輝いたアン・ハサウェイは今回も適役で光っています。この映画は、2006年にこれも私が好きな大女優メリル・ストリープと共演した「プラダを着た悪魔」のPART2とも言われていますが、9年の歳月を経てさらに大物の女優に成長している感があります。

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♥ファッション業界で働く女性のドラマということで、「プラダを着た悪魔」や沢尻エリカ主演のTVドラマ「ファースト・クラス」のようなドロドロとした人間関係を想像しましたが、この映画にでてくる登場人物はほとんど善人です。こんな会社が募集するシニア・インターンなら、私も応募してみたいです。

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♥ベンと同時期に何人かの若手がインターンとして採用されます。出勤初日にベンがごついビジネスカバンから旧式のケータイや電卓や老眼鏡を取り出すのに対し、若手はカジュアルなバックからiPhoneや付属の機器を取り出す場面は、アナログとデジタルの世代交代を暗示していて思わず笑いました。ちなみに、この会社のオフィスでは、私もこのブログの作成に使っているMac Book Pro 15インチが使われていて、アラカン世代の私も何とか時代の流れについて行っているなと思いました。(ベンはMacを起動できません。)就業時間後に、ジュールスがベンにフェイスブックの開設手続きを手伝うのをきっかけに、二人がお互いの心を通わせる場面はよかったですね。

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♥ベンはかつてアナログ時代の遺物である電話帳を作成する会社の重役でしたが、若手だらけの会社に来ても上から目線にならず、自分の立場と役割をわきまえながら生きる姿は、私も今後の人生で見習っていきたいです。ベンが運転する車の中で、ジュールスが心の安らぎを感じながら、イビキをかいて寝てしまうシーンもよかったです。妻、母親、会社の経営者と、これまでの人生で手に入れた貴重な皿を割らないためには、3つの皿を絶えず回していなければなりません。男でも女でも、多くの人間は人生のある時点で皿回しのような生活を強いられますが、生身の人間にはどこかで安らぎと癒しが必要です。

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♥女性監督によるこの映画には「セックス・アンド・サ・シティ2」のスタッフも関わったらしく、ジュールス役のアン・ハサウェイのファッションセンスの良さが話題になっています。この女優、確かに素敵ですが、私はむしろ、時代に媚びずに自分のファッションスタイルを貫くロバート・デニーロ演じるベンの方がカッコよく感じました。女性の涙を見た時に、さっとハンカチを差し出すアナログ世代の男の美学に魅せられます。

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♥TVドラマ「セックス・アンド・サ・シティ」みたいに、女性の社会進出が進んでいるように見えるアメリカの社会でも、フルタイムで働く女性と専業主婦のママ友との関係は微妙であることが分かりました。

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♥この映画は野外でのグループ太極拳から始まって太極拳で終わります。また映画の中で、ベンとジュールスが別れる時に「サヨナラ」と挨拶します。ベンが「スシでも買ってこようか」とジュールスに尋ねるのにも注目です。グローバル化が進む世界の中で、アメリカでは生活の中に何かアジア的なものを取り入れるのがクールなのでしょうか。

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♥この映画は、意外なことに、アメリカの企業やビジネスについての私の固定観念を変えてくれました。例えば、欧米の会社では経営陣以外のスタップは「サービス残業」はしないと思っていました。でも、就業時間が過ぎて、ベンが同僚から「帰らないのか」と聞かれて、「上司(ジュールス)がまだ仕事をしているから帰れないよ」と応える場面では、アメリカにもこんなビジネスマンがいる(いた)のかと思いました。

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♥日本でも時々「会社は誰のもの」という議論が聞かれます。アメリカでは、創業者兼最高経営責任者(CEO)であっても、会社が大きくなると、経営幹部会や株主の意向に左右され、その地位は必ずしも安泰ではありません。ジュールスが仕事と家庭を両立させるために、同僚幹部の助言に従って、自分が創った会社の経営を新しいCEOに任せようとします。でも、「家族でも会社の仲間でも自分が愛するものは大切にしたほうがいい」というベンのアドヴァイスにより目覚めます。アメリカ人にも、会社とそこで働く仲間を家族のように愛する日本人的な感覚があることが意外でした。そういえば、アップルを去ったスチィーブ・ジョブズも自分が創った会社に戻りましたね。あのホリエモンも、いつの日かライブ・ドアに戻るのでしょうか。

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♥昔の欧米のオフィスは個室やブースなどプライバシーを尊重した造りでしたが、ファッション業界のせいでしょうか、この映画に出てくる会社は日本的に壁や間仕切りを取っ払って、いわゆる「タコ部屋」方式で仕事をしています。ジュールスが事務所の中をバイクで移動するのも面白いです。

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♥一流企業の重役が社用で利用する車と言えば、ベンツ、BMW、あるいはレクサスでもセダンというイメージがありましたが、この映画でジュールスが使う車はアウディのSUVです。これにも時代の移り変わりを感じます。ひょんなことから、ベンがジュールスの運転手を務めるところからストーリーが急展開します。

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♥この映画ドラマのもう一つのカギは、「専業主夫」かつ「イクメン」として家事と子育てを担うジュールスの夫が握っています。ネタバレするのであまり語りませんが、ハッピーエンドで終わるこの映画ですが、「男と女の関係はそんなに簡単に修復できるのかな」と思いました。(この映画で唯一の疑問点です。)

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♥若い女性の世代と中高年の世代が共に共感できる映画はそれほどありませんが、この秋、この映画は日本で話題を呼びそうです。きっと、この映画で刺激を受けるアラカン世代や団塊世代の方も多いかと思います。

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なお、ロバート・デニーロについては、またこちらで語ります。

ロバート・デ・ニーロ主演の映画の最高傑作はやはり1976年の「タクシードライバー」です。

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