「アラカン男の独り言」「カミカゼ」という言葉の「誤用」とは ?

最近は世界中でいわゆる自爆テロ事件が起こっていますが、欧米のみならず私の住むラテンアメリカでも、こうしたテロの行為や犯人そのものが「カミカゼ」とか「カミカ」(スペイン語)と呼ばれるのをよく耳にします。

最近、「神風(カミカゼ)」に関して、おかしな(?)記事を目にしましたので、下記にそのままご紹介します。

自爆テロ犯を「カミカゼ」 誤用が欧州拡散
産経新聞 8月3日(水)7時55分配信

 3月のベルギー同時テロや、7月のフランス南部ニースのトラック突入テロなど、テロが相次ぐ欧州で自爆テロ犯が「カミカゼ」と呼ばれる傾向が表れている。語源は日本の神風特攻隊だが、自爆テロ犯は民間人を無差別に殺害する一方、神風特攻隊は国際法が適用される正規軍が相手だった。両者が区別して用いられるべきなのは明らかだが、「誤用」はマスコミから国会議員まで幅広い層に根づいてしまったようだ。(ニューヨーク 松浦肇)

 「ニースのカミカゼや(パリ同時多発テロで襲撃された)バタクラン劇場の怪物たちは、通常の国家だったら、犯行前に牢屋(ろうや)に入っているか、国土から追放されていたはずだ」

 7月19日、オランド仏大統領も出席した仏議会の緊急招集会合。保守系議員が相次ぐテロを非難する際、トラック突入テロの実行犯をカミカゼと表現した。

 戦後のフランスでは、「殉死者」という意味合いで外来語として輸入され、最近のテロ続発で自爆テロ犯をカミカゼと呼ぶ習慣が定着した。テロ捜査を統括するパリのフランソワ・モランス検事も、記者会見で「カミカゼ」を連発する。

 国政の場だけではない。仏大手紙フィガロの電子版で検索すると、年初から約560件(7月末時点)の記事で「カミカゼ」が用いられた。ほとんどがテロがらみの記事で、カミカゼは自爆テロ犯を指している。

 実は、「誤用」は欧州全体に広がっている。特に目立つのが大陸の国々だ。

 例えばイタリア。ベルギー同時テロで自爆した容疑者の弟が、テコンドーのベルギー代表としてリオデジャネイロ五輪出場を決めたが、伊日刊紙ラ・スタムパは「カミカゼの弟」と紹介した。スペインでも自爆テロ犯を「カミカゼ」と呼ぶ。非合法武装組織のテロリストもカミカゼにたとえられた例があった。「死を恐れない決行者」として拡大解釈された格好だ。

 一方で、米国などの英語圏では「誤用」はあまり見られない。一般に、自爆テロ犯は「スーサイド・ボマー(自殺のように爆死する者)」と呼ばれており、「カミカゼ」といえば神風特攻隊を指す。

 この春は、米共和党の中心的な存在であるポール・ライアン下院議長の任務が、「カミカゼ的使命」と比喩されていた。米大統領選の党指名候補選びや政策決定で板ばさみにあっており、「政治生命を賭した難題」という意味合いで用いられたにすぎない。

 米国は神風特攻隊の攻撃を受けた経験を持ち、同盟国として多くの知日派を抱える。一方、欧州にとって日本はなお「遠い国」で、過度に日本の文化を神秘的にとらえるため「誤用」が目立つ面があるようだ。

 

1.「カミカゼ」の定義について?

記事では、「語源は日本の神風特攻隊だが、自爆テロ犯は民間人を無差別に殺害する一方、神風特攻隊は国際法が適用される正規軍が相手だった。両者が区別して用いられるべきなのは明らかだ」と述べています。でも、世界で「カミカゼ」という言葉を使う多くの人は、世の中で一番大切なはずの自分の命を犠牲にしてまで相手を殺害しようとする行為の異常さを皮肉っているのであって、相手が軍隊であるか民間人であるかについては関心がありません。「カミカゼ」という言葉の「正しい使用」について世界に訴えても無駄でしょう。

2.英語圏の人々は「カミカゼ」の意味を正しく理解?

また記事は、『一方で、米国などの英語圏では「誤用」はあまり見られない』と述べています。さらにその理由として、『米国は神風特攻隊の攻撃を受けた経験を持ち、同盟国として多くの知日派を抱える。一方、欧州にとって日本はなお「遠い国」で、過度に日本の文化を神秘的にとらえるため「誤用」が目立つ面があるようだ』と述べています。でも、米国は「カミカゼ」の攻撃を受けた経験があり、現在は同盟国として多くの知日派がいるので、「カミカゼ」という言葉の「誤用」は少ないというのも疑問です。CNN、NBC、FOXなどのニュースを見ていると、巷のアメリカ人がテロ行為を「カミカゼ」を呼ぶのをよく耳にします。つまりアメリカでもヨーロッパでも状況は同じです。

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それにしても、全国紙の記事がこのレベルでは、これを読んでいる日本の読者の国際理解も深まらないでしょう。

なお、私は、第二次世界大戦において特攻攻撃で亡くなられた方々には心から哀悼の意を感じているので、念のため申し添えます。

 

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