「第8回米州首脳会議(VIII Cumbre de las Américas)」米国とキューバの関係は振り出しに戻った感があります!

2015年4月17日から開始した私のブログ「アラカン男のラテンな人生」の記念すべき第1号の投稿は、当時滞在していたパナマで開催された第7回米州首脳会議での米国オバマ大統領とキューバのカストロ議長の歴史的な会談に関する記事でした。ご存知の通り、この会談後は両国の大使館の相互開設や米国人の渡航制限の緩和などにより、両国の関係は急速に改善したかのように見えました。

パナマ湾に米軍の空母現る!

ところがその後、2017年1月の共和党トランプ政権の発足、さらに同年6月に発表された米国人の渡航やキューバとの経済取引を制限する政策により、両国の関係は再び緊張しています。また、理由はよく分かりませんが(キューバによる音響攻撃?)、米国はすでにキューバに滞在していた大半の外交官を本国に引き上げ、キューバも米国に対して同様の措置を取っています。2017年に100万人を超えた米国からキューバへの旅行者(在米キューバ人を含む)も、2018年には激減する見込みです。

トランプ政権による対キューバ政策の見直し!今後もどっちもどっちの奇妙な関係が続きそうです…。

こうした状況の中で、今回ペルーのリマで3年ぶりに「第8回米州首脳会議」が開催されました。米国のトランプ大統領はシリア問題など緊急事態への対応を理由に欠席し、キューバのラウル・カストロ議長など各国首脳の多くは姿を見せず、米州機構(OEA)から非難を浴びているベネズエラのマドゥロ大統領は初めから招かれず、前回の会議に比べると寂しい顔ぶれになりました。

さて、会議では4月13日と14日の首脳レベルの会合に先立ち、各国の市民グループによる意見交換のセッションが設けられましたが、キューバから参加したグループがOEAの事務局長や米国からの参加者を攻撃的な口調で激しく批判していのが印象的でした。非難の内容は、キューバの同盟国ベネズエラの締め出し、米国のキューバへの経済封鎖、中南米やカリブ諸国への米国の内政干渉に抗議するものでしたが、今回キューバからは若者を中心に共産党の精鋭部隊が送り込まれたようで、キューバ政府がこの会合を外交戦略の一環として利用しようとした意図が伺えました。キューバの若者の「活躍」はこちらのテレビや新聞で連日伝えられましたが、あまりに興奮が激しいため(特に副リーダーのこの女性)、他国からの代表団は完全に引いている感じでした。ちなみに、キューバからは反政府系の市民グループもこの会議に参加しようと試みたようですが、キューバ政府から出国を阻止されたという情報もあります。詳しくはこちらをご覧ください。(以下の写真はGranma紙から引用しました。)

さて、13日と14日の首脳会合は予想された展開になりました。米国から出席したペンス副大統領は、国民を貧困を陥れ、基本的人権を認めず、地域に革命イデオロギーを輸出し、腐敗したベネズエラと組んでいるカストロ政権を疲れ切った共産主義体制と非難し、米国は今後もキューバの国民を支援すると述べました。

米国のマイク・ペンス副大統領

As we speak, a tired communist regime continues to impoverish its people and deny their most fundamental rights in Cuba.  The Castro regime has systematically sapped the wealth of a great nation and stolen the lives of a proud people.  Our administration has taken decisive action to stand with the Cuban people, and stand up to their oppressors.

No longer will the United States fund Cuba’s military, security and intelligence services — the core of that despotic regime.  And the United States will continue to support the Cuban people as they stand and call for freedom.

But Cuba’s dictatorship has not only beset its own people, as we all well know — with few exceptions in this room acknowledging that.  Cuba’s dictators have also sought to export their failed ideology across the wider region.  And as we speak, they are aiding and abetting the corrupt dictatorship in Venezuela.

In Venezuela, as in Cuba, the tragedy of tyranny is on full display.  As this body knows well, Venezuela was one of our hemisphere’s richest nations once, and not too long ago. It is now among the poorest. Venezuela was also once a flourishing democracy.  It has now collapsed into dictatorship and tyranny.

これに対しキューバの外相は、米国との対立は望まないが、米国からの脅迫は決して受け入れない、内政への干渉には1ミリとも妥協しない、キューバ人が血を流し多大な犠牲の上に勝ち取った独立、革命、社会主義は必ず守ると激しく反論しました。キューバの外相が演説する際は、米国の副大統領は席を立っていたようで、この様子から両国の対立はさらに深まったようです。前回の米州首脳会議を機に好転した両国の関係は、今回の会議で再び振出しに戻りました。

キューバのブルーノ・ロドリゲス外相

Cuba no aceptará amenazas ni chantaje del gobierno de los Estados Unidos. No desea la confrontación, pero no negociará nada de sus asuntos internos ni cederá un milímetro en sus principios. En defensa de la independencia, la Revolución y el socialismo, el pueblo cubano ha derramado su sangre, asumido extraordinarios sacrificios y los mayores riesgos.

さて、会議が終わった16日には、ペルーから同じ飛行機で帰国した政府と民間の代表団を、なんとラウル・カストロ国家評議会議長自らが後継者と見られる副議長のディアス・カネル氏らと共に空港で迎えました。キューバのテレビや新聞は、キューバの「官民合同の代表団」の「戦果」と労を称えるニュースで溢れています。

ところで、今週の18日と19日にはキューバの国会が開かれ、すでに引退を表明しているラウル・カストロ議長に代わるキューバの首脳が選ばれる予定です。キューバでは、いよいよポスト・カストロの時代が始まります!

 

よろしければ、こちらの記事もご覧ください。

キューバは、旅行するのと生活するのでは大違いの国です。(その10)キューバでは相変わらず社会主義国の伝説を体験できます!

 

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


ページ上部へ戻る