「ブルックリン(BROOKLYN)」の評価と感想(アカデミー作品賞と主演女優賞他にノミネートされている作品ですが…)

先日このブログでも紹介した「ルーム(Room)」と同じく、2016年のアカデミーの作品賞、主演女優賞他にノミネートされている「「ブルックリン(BROOKLYN)」は日本では7月に公開予定ですが、パナマでは先週から公開されています。スペイン語版の副題は「Amor Sin Fronteras(愛に国境は無い)」です。

日本語版の予告編はこちらです。

 

「映画.COM」の解説を引用します。

1950年代、アイルランドからニューヨーク・ブルックリンにやってきた移民の少女の青春や揺れ動く心を、「つぐない」のシアーシャ・ローナン主演で描いたドラマ。脚本は、「ハイ・フィデリティ」「アバウト・ア・ボーイ」の原作者で、「17歳の肖像」「わたしに会うまでの1600キロ」などで脚本家としても活躍する作家のニック・ホーンビィ。監督は「BOY A」「ダブリン上等!」のジョン・クローリー。大人しく目立たない性格の少女エイリシュは、妹の将来を案じた姉の勧めで、アイルランドの小さな町からニューヨークへとやってくる。それまでとはあまりに異なる大都会での生活に戸惑うエイリシュは、しかし、イタリア系移民の青年トミーとの恋をきっかけに大きく変わっていく。いつしか洗練されたニューヨーカーとしてカリスマ性すら発揮するエイリシュだったが、そんな彼女のもとに故郷からある悲報がもたらされる。

総合的な評価と感想ですが、古き良き時代のアメリカで真っ直ぐに生きたアイルランド系移民の少女を正攻法で描いた秀作で、アカデミー作品賞へのノミネートは納得できます。シアーシャ・ローナンは、思春期から大人に成長する主人公エイリシュ役を好演していて、アカデミー主演女優賞へのノミネートも納得できます。でも、面白いながらも淡々としたストーリーのせいか、同じく作品賞にノミネートされている他の作品に比べると今ひとつインパクトに欠ける気がします。しかしながら、私が愛用している「IMDb(Internet Movie Database インターネット・ムービー・データベース)」の視聴者評価では、他のノミネート作品を凌いで、10点満点中で7.5点以上をマークしているのが気になります。きっと、映画のテーマがアメリカ人にとってなじみ深い点が有利に働いているのではと思います。

 

以下は、映画を観てのコメントです。写真はこちらのサイトから引用させていただきました。

♥アイルランドの小さな町で母親と姉と暮らしていたエイリシュは、変化の無い退屈な日常と将来への不安から、姉の勧めで一人でアメリカに移住することを決意します。ニューヨークのブルックリンはアイルランド系の移民が多く住む地区で、彼女はそこの下宿アパートに住み、同じくアイルランド系の神父や下宿の女主人、さらに先に移民した先輩たちの励ましと指導を受けながら、異国の大都会での生活に適用しようと懸命に努力します。昼間は百貨店で店員として働き、夜は大学で会計簿記を学び、時々ホームシックに悩みながらも、毎日が忙しく過ぎていきます。そんなある日、彼女はダンスパーテーで知り合ったイタリア系移民の配管工の若者と恋に落ちます。二人は結婚の約束をしたちょうどその時に、生まれ故郷のアイルランドから最愛の姉が急死したとの知らせが届きます。アイルランドに一時帰国したエイリシュは、仕事のオファーも受け、別の若者に心が惹かれたりしているうちに、独り身になった母親の面倒をみるためにも住み慣れた故郷に戻ろうかと迷います…。

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♥イギリスの北にあるアイルランドからアメリカの東海岸にあるニューヨークまでは旅客船で数週間で着くのでしょうか。三等船室に乗ったエイリシュが航海の最初の日に腹一杯食事をした後、船酔いで七転八倒するシーンは面白いです。日本から移民船に乗って地球の裏側の南米まで一ヶ月以上もかかってたどり着いた人たちも大変だったろうなと思いました。期待と不安で一杯のアイルランド系移民の少女が、異国の大都会で逞しく成長していく姿も見所です。オドオドした田舎娘が、洗練された都会の女性に変身していく姿がシアーシャ・ローナンの名演技で描かれます。

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♥アメリカは移民の国。イギリス人やフランス人より遅れて来たアイルランド以外にも、イタリアなど他のヨーロッパの国、さらに中南米、アジア等の国からも移民が押し寄せています。移民たちは、最初は同国出身者同士で寄り添いながらも、次第に自分たちが閉じこもっている殻を抜け出して、新天地に順応しようと懸命に生きています。主人公エイリシュが恋に落ちたイタリア人青年も、英語のハンディがありつつも、明るい将来を夢見て肉体労働をしながら懸命に生きています。アメリカは、世界中から夢と希望を持ってやって来た人々によって造られた国だと改めて思いました。エイリシュが恋人の家に食事に招待された際に、アイルランド人の仲間からスパゲティの食べ方を事前に教えてもらうシーンも面白いです。アメリカや中南米に移住した日本人の子孫も、世代が代わるにつれて先祖の出身国が違う人間と家族を形成していますが、新大陸ではどこの国でもこの映画のようなシーンがあるのだと想像しました。

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♥新大陸に移住した日本人も、日本と移住国の二つの文化の間で生きていますが、この映画の主人公もアイルランドとアメリカの間で行きています。住む土地と生涯のパートナーは一人しか選べませんが、心の中にはいつも二つの国があるのだと思います。そう言えばこのテーマ、かつては山崎豊子の小説「二つの祖国」や「大地の子」で取り上げられ、僭越ながら私の最近の小説「ある日曜日」でも取り上げています。

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