第88回アカデミー賞(The 88th Academy Awards)作品賞の予想

 

世界の映画界で最高の栄誉とされる第88回アカデミー賞の授賞式が2月28日(日曜日)に行われます(日本時間では翌29日)。すでに1月に全部門のノミネート作品が発表されています。

最も注目される「作品賞(Academy Award for best motion picture of the year)」には8つの作品がノミネートされています。日本にいると授賞式の前に全作品を観ることはできませんが、米国とほぼ同時期に作品が公開されるパナマにいるおかげで、すべてを観ることができましたし、このブログで取り上げることもできました。(2月21日の記事で取り上げた「ブルックリン」が最後に観た作品です。)

アカデミー賞は過去1年間で米国のロサンゼルス地区で上映された作品が審査の対象となり、「映画芸術科学アカデミー」という組織の会員による投票で決まるそうですが、誰がどのような基準で審査しているのか不明な部分があります。ここ数年間の傾向から言えることは、必ずしも大衆的な視点から「面白い」と感じる作品が受賞する訳ではありません。また、受賞した作品が必ずしも興行成績で上位にくる訳ではありません。例えば、昨年作品賞を受賞した「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」は、日本ではそれほど評判になりませんでした。私としては、このブログでも紹介し日本でもヒットした「マイ・インターン」「ジュラシック・ワールド」あたりが受賞してもいいかなと思いますが、ノミネートすらされていません。

さて、このようなアカデミー賞の性格と最近の傾向を踏まえて、今回の作品賞の予想をしてみました。以下、私の予想順位順に、ブログの記事の記述を引用しつつコメントします。

 

1.「レヴェナント 蘇えりし者」

IMG_4865 『2016年の第88回アカデミーの作品賞、監督賞、主演男優賞他にノミネートされている映画ですが、レオナルド・ディカプリオの渾身の演技は前評判通りであり、主演男優賞は彼で決まった感があります。すでに発表された第73回ゴールデン・グローブ賞では、この映画は主演男優賞以外に作品賞と監督賞を獲得していますが、こちらの方はライバルが多くて微妙なところです。』(2016.1.24の記事より抜粋)

ノミネートされた作品をすべて観た現時点での感想は、他の作品(特に下記の3と4)に比べてシナリオや脚本が単純という弱点がありますが、今回は消去法的にこの映画が作品賞を獲得すると思います。この映画が、作品賞、主演男優賞(レオナルド・ディカプリオ)、監督賞(アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ)等を独占する可能性もあります。レオナルド・ディカプリオにとって、自らが主演する映画の作品賞獲得は「タイタニック」などがありますが、今回は初の主演男優賞に輝く可能性が大きいと思います。メキシコ人のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥは、昨年は「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」で監督賞を受賞しています。今回はライバルが多いですが、やはり最有力です。たとえ2年連続の受賞を逃したとしても、今回のノミネートによって今や世界の名監督としての地位を確立したと思います。

 

2.「ルーム」

FullSizeRender 総合的な評価と感想ですが、家族とは、親子とは何かと考えさせられる作品で、アカデミー作品賞へのノミネートは納得できます。男に誘拐され7年間も監禁された主人公ジョイを演じるブリー・ラーソンのアカデミー主演女優賞へのノミネートも納得できます。でも、何が凄いかというと、子供のジャック役を演じたジェイコブ・トレンブレイという男の子です。アカデミーに子供向けの特別賞があれば受賞は間違いないくらいに素晴らしい演技を見せてくれます。』(2016.2.10の記事より抜粋)

⇒今も同じコメントです。なお、今回のアカデミー主演女優賞については、この映画で主演したブリー・ラーソンを筆頭に、「ジョイ(Joy)」で主演したジェニファー・ローレンス、さらに後述の「ブルックリン」で主演したシアーシャ・ローナンあたりが有力だと思います。(個人的にはブリー・ラーソンを推します。)

 

3.「マネー・ショート 華麗なる大逆転」

IMG_4845  『さて、この映画についての私の総合的な感想と評価ですが、2000年代半ばの米国の不動産バブルの頃の経済社会の狂乱ぶりと人々のどん欲(Greed)さをよく描いた作品です。しかしながら、投資の世界に疎い人が観ると内容が十分に理解できないと思います。アカデミー賞の選考を行うハリウッドの映画関係者のすべてが内容に共感できるとは思えませんので、作品賞の受賞は難しいかと思いますが、監督賞か助演男優賞あたりなら可能性があるかもしれません。』(2016.1.17の記事より抜粋)

⇒今も同じコメントです。

 

4. 「スポットライト 世紀のスクープ」

FullSizeRender  さて、この映画についての私の総合的な評価と感想です。カトリック教会のスキャンダルを暴こうとする熱血記者たちの姿を、役者のセリフと演技力だけで描き切った重厚かつ本格的なドラマ作品です。アカデミーの作品賞はライバルが多くて微妙ですが、監督賞ないし脚本賞ならば可能性が高いと思います。でも、アカデミーの作品賞は、脚本が優れている作品が受賞する傾向があることを考慮すると、この映画はダークホース的な位置づけにあると思います。』(2016.1.27の記事より抜粋)

⇒今も同じコメントです。しかしながら、大方(大衆)の予想を裏切って、脚本勝負のこの作品が他を出し抜く可能性は依然として残っています。

 

5. 「ブルックリン」

FullSizeRender  『総合的な評価と感想ですが、古き良き時代のアメリカで真っ直ぐに生きたアイルランド系移民の少女を正攻法で描いた秀作で、アカデミー作品賞へのノミネートは納得できます。シアーシャ・ローナンは、思春期から大人に成長する主人公エイリシュ役を好演していて、アカデミー主演女優賞へのノミネートも納得できます。でも、面白いながらも淡々としたストーリーのせいか、同じく作品賞にノミネートされている他の作品に比べると今ひとつインパクトに欠ける気がします。』(2016.2.21の記事より抜粋)

⇒今も2日前と同じコメントです。

 

6. 「オデッセイ」

images 2 『そこから日本までは14時間以上のフライトです。長時間の旅ですが、マット・デイモンの最新作「The Martian(火星の人)」などの映画を観て結構楽しめました。この映画の日本語版のタイトルは「オデッセイ」だそうです。なぜそのようなタイトルが付いたのか不明ですが、飛行機の中で暇つぶしに観る娯楽映画としては最高の作品です。(2015.9.8の記事より抜粋)

⇒今も10月時点と同じコメントです。ただし、意外だったのは、この作品が1月に発表されたゴールデン・グローブ賞の「コメディ部門」で作品賞を獲得したことです。(ドラマ部門の作品賞は「レヴェナント 蘇えりし者」です。)この映画がなぜ「コメディ」の部門に入るのか疑問です。火星を舞台にしたありえない話をうまく娯楽映画にしたという意味でしょうか。

 

7. 「マッドマックス 怒りのデス・ロード」

images 2『1979年にメル・ギブソン主演で公開されたオーストラリア映画「マッドマックス」シリーズはパート3まで製作されましたが、今回実に27年ぶりに主演を交代して復活しました。資源が枯渇した未来社会が舞台の割には、改造車が砂漠を暴走してやたらと燃料を浪費しまくるのが気になりますが、メル・ギブソン流のナンセンスなまでのアクション・バイオレンス精神は今回も完璧に引き継がれていて、一瞬たりとも飽きさせません。暇つぶしに観るには楽しい映画です。』(2015.9.8の記事より抜粋)

⇒今も10月時点と同じコメントです。同じようなシリーズ物のアクション映画としては、「ターミネーター・ジェネシス」「スター・ウォーズ(フォースの覚醒)」などもありますが、なぜこの作品がノミネートされたのか不明です。

 

8. 「ブリッジ・オブ・スパイ」

IMG_3609 『この映画は監督と主演以外にも、有名な脚本家が加わるなど、最強のメンバーで製作されたという触れ込みです。すでに公開された米国でも、公開前の日本の前評判でも、アカデミー賞の有力候補との声も聞かれます。しかしながら、正直のところ、たとえほかの映画賞であっても、作品賞、監督賞、主演男優賞等、どのジャンルの賞を取るにも何か足りない印象です。でも、今年はこれだというハリウッド映画が出てこないので、消去法的にノミネートだけはされるかもしれません。』(2015.10.19の記事より抜粋)

⇒今のところ、昨年10月に私が予想した通りの展開になっています。

 

なお余談ですが、パナマにいると米国で封切りされた映画がすぐに観れますが、日本では作品によりますが数ヶ月間も遅れて上映される理由がよく分かりません。特に、アカデミー作品賞にノミネートされている上記の1から5までの作品が未だに上映されていないのは残念です。日本の映画ファンは経済や文化のグローバル化の恩恵を受けられないのでしょうか…。

→よろしければこちらもご覧ください。

 

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