• 2015.7.6
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「アラカン男の独り言」ギリシャは決して崩壊しません : ラテンアメリカ諸国の教訓から学ぶ

 

7月5日に行われたギリシャの国民投票で、EU側が求める財政緊縮案が否決され、いよいよギリシャ債務不履行(デフォルト)ユーロ圏からの離脱のシナリオが現実味を帯びてきたとの報道が内外でなされています。また、ギリシャは国家として崩壊の危機にあるとの意見も聞かれます。

でも、借金を返せなくなった国が崩壊することがないのは、ラテンアメリカの1980年代のいわゆる「失われた10年(Decada Perdida)」以来の歴史と教訓が教えてくれます。個人や企業と違い、国の場合は借金を踏み倒しても、その国や国民の財産が借金の形として国際社会や他国から強制的に収用されることはありません。

ところで、ギリシャラテン系の国に属するか否かは定かではありませんが、私の知る限りラテン的な国だと思います。EU諸国を相手にしたたかに交渉する若手のイケメン首相の立ち振る舞いは、ラテンアメリカ諸国の「教訓」から学んでいるのではと思うほどラテン的です。債務不履行で一番困るのは実は貸した側であること、本来は自国の不始末で生じた問題を国民の支持を取り付けることで外国のせいにする手法など、この人は実によく知っています。散々揺さぶりをかけて、最終的にはEU側から譲歩を引き出そうとする戦術が見え見えです。

おそらく今後の展開としては、ギリシャは実行するつもりも無い妥協案を提示し、EU側はしぶしぶこれを受け入れ、ギリシャは先送りした問題がまた顕在化するまでの間しらばっくれるというパターンでしょう。また、今のところ、ギリシャユーロ圏から離脱するつもりはありません。なぜなら、ドラクエだがドラクマとかいうヨーロッパ最弱の怪しげな通貨を再び導入するメリットはありませんし、辞任した前の財務大臣が語った「今のギリシャには新しいお札を刷るための輪転機など無い」というのも本当でしょう。

でも最近では、借りる方だけでなく、貸す方も賢くなって、ギリシャなどヤバそうな国から国債などを購入する時は、債務不履行に備えてクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)とよばれる保険をかけてリスクを減らしたり、かえって儲けるようなことが流行っているらしいです。つまり、ギリシャの債務不履行を歓迎する投資家等も沢山いるので、状況は複雑です。

また、おそらくギリシャも多くのラテンアメリカ諸国と同じかと思いますが、国民は自分の国は愛していても、その時々の政府は必ずしも信用していません。自分の生活に得になることであれば支持するし、もともと政治家などあてにならないという意識があるので、ダメな政府の下でもしたたかにかつ楽しく生きる術を知っています。

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銀行からの預金の引き出し制限など、ギリシャ国民の皆さんが困窮している様子が連日マスコミで伝えられています。それも現実の一部かと思いますが、以下に述べるような私のラテンアメリカでの経験から、我々に伝えられていない現実も沢山あると思います。

民主主義発祥の国であり、多くの偉大な哲学者を生んだギリシャが崩壊することは絶対にありません。今後もユーロ圏の繁栄のために一生懸命働いて稼いでくれるドイツなどの優等生国にたかりながらも、ヨーロッパ諸国と「協調」して何食わぬ顔をして生きていくでしょう。経済状況が一時的に悪くなっても、アテネ市にあるパルテノン宮殿などの古代遺跡、「マンマ・ミーア」の舞台となったエーゲ海の美しい島々は今後も世界中の人々を魅了し、多くの観光客を引き寄せるでしょう。

 

【MEXICO】

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中南米の「失われた10年」の引き金となったメキシコ累積債務問題が表面化した1982年8月、私はそのメキシコで暮らしていました。メキシコの庶民と同じく、一時は銀行からお金が下ろせなくて大変でした。でも、銀行が閉まると、いろんな支払いも出来なくなるので、かえって助かることもあります。ギリシャの国民が、携帯電話や電気・水道等の公共料金の支払いの「猶予」を受けているとのニュースを聞いたとき、まさに当時を思い出しました。

一部の銀行で起こった暴動等、メキシコの政治や経済が混乱している様子が世界中で報道され、日本にいた私の家族や友人が「安否」を心配して連絡して来ましたが、何をそんなに心配しているのかと不思議に思いました。

一般の多くのメキシコ人は、外国への借金は、歴代の悪い政治家が懐を潤すために勝手に作ったもので、何で俺たちが返さなければならないのかという意識でした。「経済危機」の最中でも、庶民は酒と歌とセニョリータ(セニョール)を愛し、街角にはマリアッチセレナータが聞こえていました。悪い政治家どもに、個人の生活を楽しむ権利を奪われてたまるかという、メキシコ人流のマイペースな生き方には感心しました。

そうこうしているうちに、膨大な借金は棒引き、支払い猶予となり、世界経済の回復も手伝ってメキシコは国として生き返りました。その後はリーマンショック等の影響も受けましたが、米国や日本を含む諸国との自由貿易等の政策によって、最近ではまずまずの発展を遂げているのは皆さんご存知の通りです。

 

【BRASIL】

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 最近は、サッカーのワールドカップオリンピックの開催で脚光を浴びている南米の大国ブラジルも、1980年代は累積債務問題に起因するハイパーインフレや通貨価値の下落、さらに高い失業率に悩みました。

でも、その当時にブラジルを何回か訪問しましたが、失業率の上昇による治安の悪化は感じたものの、歴代政権の失政にもかかわらず、人々は生活を楽しむエネルギーだけは失っていませんでした。国際社会がこの南米の問題児をどう扱おうかと真剣に悩んでいる最中でも、国民の関心や優先度がはるかに高いカーニバルは一度も中止されること無く行われました。

失業率の高さは深刻でしたが、何とか乗り切りました。現在、ギリシャラテン諸国の筆頭であるスペインでは、なんと若者の半数近くが失業中と聞きますが、それでも何とか国としてやっていけるのは、大らかなラテン気質のおかげでしょうか。日本が同じような状況になったら一体どうなるのでしょう。

 

【ARGENTINA】

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 アルゼンチンの方は、1980年代からなんと現在に至るまで累積債務債務不履行(デフォルト)の世界チャンピオンです。また、国際社会から散々非難されながらも、国民の生活を楽しむ権利だけはしっかりと守っているラテン諸国の「優等生」です。国の財布にはお金が無いはずですが、なぜか個人の懐は別なようで、人々は夜な夜な街に繰り出し、アモールを語り、美味しいワインや肉を堪能し、官能的な踊りに酔いしれています。

 

不思議にも、大手のマスコミのほとんどは、ラテンアメリカ諸国のこうした「現実」や「素顔」を伝えてくれません。最近、出会った記事としては、今年1月に日経新聞に掲載された『デフォルト国アルゼンティンに現在の「桃源郷を見た」』という記事だけが「真実」を伝えていると思います。私の記事が信用できない方は、ぜひ日経新聞の方も合わせてご覧下さい。

 
こんなラテン気質を日本人が少しでも身につけたら、日本国民は今よりずっとハッピーになれると思います!

 

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