「ルーム(Room)」の評価と感想(アカデミーの作品賞と主演女優賞他にノミネートされている作品ですが…)

2016年のアカデミーの作品賞、主演女優賞他にノミネートされている「ルーム(Room)」は日本での公開は未定ですが、パナマでは先週から公開されています。

オリジナル版の予告編はこちらです。

 

「映画.COM」の解説を引用します。

アイルランド出身の作家エマ・ドナヒューのベストセラー小説「部屋」を映画化。監禁された女性と、そこで生まれ育った息子が、長らく断絶されていた外界へと脱出し、社会へ適応していく過程で生じる葛藤や苦悩を描いたドラマ。7年前から施錠された部屋に監禁されている女性と、彼女がそこで出産し、外の世界を知らずに育った5歳の息子ジャック。部屋しか知らない息子に外の世界を教えるため、自らの奪われた人生を取り戻すため、女性は全てをかけて脱出するが……。監督は「FRANK フランク」のレニー・アブラハムソン。「ショート・ターム」のブリー・ラーソンが主演し、息子とともに生きようとする母を熱演した。アカデミー作品賞とも親和性の高いトロント国際映画祭の観客賞を受賞するなど、高い評価を獲得。

 

総合的な評価と感想ですが、家族とは、親子とは何かと考えさせられる作品で、アカデミー作品賞へのノミネートは納得できます。男に誘拐され7年間も監禁された主人公ジョイを演じるブリー・ラーソンのアカデミー主演女優賞へのノミネートも納得できます。でも、何が凄いかというと、子供のジャック役を演じたジェイコブ・トレンブレイという男の子です。アカデミーに子供向けの特別賞があれば受賞は間違いないくらいに素晴らしい演技を見せてくれます。

 

以下は、映画を観てのコメントです。写真はこちらのサイトから引用させていただきました。

♥女性を誘拐して何年間も監禁するという事件は、最近日本でもありましたが(確か新潟県あたり?)、世界中で同じようなことが起こっているようです。この映画も、実話に基づいた小説を原作にしています。主人公ジョイは、17歳の時にある男に誘拐されて7年間も男の家の中庭にある小屋に監禁されます。そして、その男に犯された結果として生まれた男の子ジャックを母親として愛情をもって育てるという設定です。この小屋には、天井に空が見える窓が一つあるだけです。二人を閉じ込めている男(ニック)は、小屋のドアを電子ロック式にして、食料や生活必需品を運び込む際に時々入ってきます。ジョイはかつてニックをトイレの蓋で殴って逃げようとしましたが、取り抑えられて手首を痛めます。

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♥ジョイとニックとの間に生まれた子供ジャックは、5才の誕生日までこの狭い部屋(Room)から出たことがありません。つまりジャックにとっては、このRoomと母親のジョイから受ける教育が世界のすべてです。テレビに映る世界や人間や動物はバーチャルで、世の中にはジョイと母親のジョイと時々やって来るニック(Old Nick)のみが存在すると思っていますが、ニックがどういう人物かは理解していません。この映画が面白いのは、時々カメラのアングルが子供であるジャックの視線になることです。ニックが来る時はいつもクローゼットに閉じ込められ、そこから大人たちの姿を垣間見ます。生まれてから髪を切ったことがないため、中性的な容姿になった少年役を上述のジェイコブ・トレンブレイが素晴らしく演じます。

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♥そんな生活をしていたジョイですが、監禁男のニックが職場を解雇されて半年以上も仕事が見つからないのを知り、自分と子供の今後の生活に不安を抱きつつ、小屋からの脱出を決意します。ジャックにこれまでの経緯やテレビに出ている人や犬はバーチャルではなくレアルであると説明します。ニックがジョイと口論した腹いせに小屋の電気を止めたのを利用して、ジャックが病気になったと嘘をつき、彼を病院に運ばせようとします。この手がうまくいかないので、今度はジャックが病気で死んだことにして、絨毯に包んた死体を小屋の外に運び出させることに成功します。ニックが運転するトラックの荷台に乗って小屋から脱出したジャックは、ジョイに言われたとおりに荷台から飛び降り、通行人に助けを求めます。この辺のストーリー展開はややご都合主義で強引かなと思いますが、警察が二人が監禁されていた小屋のある家を発見し、母子が再会するシーンは泣かせます。なお、監禁男のニックはこれ以降姿を現しません。

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♥病院で両親とも再会し、ジャックと共に社会復帰のための手当てを受けたジョイは、7年前に暮らしていた家に戻ります。自分の部屋は以前と変わっていませんでしたが、その家では母親は友人と称する別の男と暮らしていました。実の父親は、自分の孫であるジャックをその素性を理由に直視するすることができません。7年間の間に、自分には息子ができましたが、両親の人生にも大きな変化があったのです。ジョイにとっては、母親とその男友達が自分と変わらぬ愛情をジャックに注いでくれることが救いです。ジャックが祖母にジョイ以外の人間に初めてI love you.と言うシーン、祖母の男友達が自分が飼う犬を連れてきてリアルな世界を見せようとするシーン、さらにジャックが近所の子供に誘われてボール遊びをするシーンなども泣かせてくれます。

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♥Roomという異常な世界から脱出した母子は、今度は社会復帰に苦労しますが、日に日に適応していく子供に比べて母親の方が大変です。失われた人生への後悔、マスコミや社会からの偏見や好奇のまなざしに耐えられず、睡眠薬を飲んで自殺を図ります。ジョイはジャックに発見されて一命をとり止めますが、もう母親役は務められず病院で長期療養することになります。ジャックは祖母(ジョイの母親)に頼んで、生まれてから切ったことがない髪を切ってもらい、お守りとしてジョイに送ります。人生で自分の息子に二回も命を救われたジョイは、これまで以上に母親としてジャックを守って生きていこうと決意します。映画が終わるころには、観客の多くは登場人物に感情移入し、この二人を応援したい気分になります。家族や親子を作るのは血のつながりではなく人間としての愛情であるというのが、この映画が伝えたいメッセージだと思います。重いテーマを扱った作品ですが、観る人を優しい気分にさせてくれます。この映画の日本での公開は未定らしいですが、ぜひ日本の方々にも観ていただきたい傑作です。

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♥さて、今年のアカデミー主演女優賞についてです。この映画で主人公のジョイ役を演じたブリー・ラーソンと、このブログでも紹介した「ジョイ」で主人公のジョイ役を演じたジェニファー・ローレンスが有力だと思います。両女優ともジョイという名の主人公を演じているのはまさに偶然です。著名度と実績ではジェニファー・ローレンスが上ですが、対象となっている映画での演技だけを観るとブリー・ラーソンにやや分があるような気がします。

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