トランプ政権による対キューバ政策の見直し!今後もどっちもどっちの奇妙な関係が続きそうです…。

6月16日トランプ大統領はマイアミのリトル・ハバナにおける演説で、オバマ前大統領が行なった対キューバ政策はキューバに譲歩するだけで米国にとって何も得るものはないとし、大幅に見直す方針を明らかにしました。

在外公館の設置、在米キューバ系住民の海外送金などは認めるが、米国企業の活動の制限など経済制裁を強化し、オバマ政権により大幅に緩和された米国人旅行客の渡航も再び制限するそうです。米国の企業活動や旅行者によってキューバに流入しているドルは、キューバの政府と軍部が独占している国営企業を潤すだけで、長年にわたり自由を奪われ抑圧されてきたキューバ国民のためには全く役立っていない。キューバにおいて、言論、報道、集会の自由、複数政党制などが認められ、国際的な監視の下で自由選挙が行われるべきだ。さらに、政治犯が解放され人権が回復されること、キューバが匿っている犯罪者やテロリストの引き渡しなどを要求しました。

これに対して、キューバ政府は即日声明を発表して反論しました。米国は他国のことを云々する前に、自国の人権問題に取り組め。多くの国民に十分な医療サービスさえ提供できない国が何を言うか。キューバの国民はすでに自由と基本的人権と民主主義を謳歌しており、今後も米国の帝国主義的な干渉に屈せず主権を守っていく…。

また、トランプ大統領の演説会には、マイアミを始めフロリダ州に在住する多くの反カストロ派のキューバ系住民が参加しましたが、この中にかつてCIAの支援でキューバにおけるテロ活動をした人物が複数含まれていたことを指摘し、テロリストを匿う国が何を言うのかとも反論しました。

(下の写真は、キューバ共産党の機関紙グランマに掲載された「Un beso de la muerte(死のキス)」と題する記事から引用しました。女性はCary Roqueと言う名で、かつてテロ活動を煽動した罪でキューバで長年投獄されました。男性はLuis Posada Carrilesと言い名で、何と1976年10月6日に起きたキューバの民間航空機に対する爆破テロの実行犯の一人とされています。二人とも、CIAの指示に従って米国のために命がけで働いた「功績」により、米国への亡命が認められ、不自由の無い生活を送っているそうです。)

今回のトランプ大統領の演説により、お互いに言いたい放題の米国とキューバの現政権が続く限り、両国の関係改善の見込みは当面無くなったようです。しかしながら、一見反目し合っているような両国ですが、そこには奇妙な「相互依存関係」が見え隠れします。

*就任以来支持率が伸び悩むトランプ政権にとって、世界の自由と民主主義の盟主たる役割を演じて国民の注目を引きつけるには、今後もキューバに米国に対立する共産主義独裁国家の役割を演じてもらうのが都合がいい。また、共和党内の反キューバ派を味方に付ければ、脆弱な政権基盤を少しは固めることができる。

*社会主義的計画経済が行き詰まり、生活物資の不足が顕著になっているキューバの現政権にとっては、米国が敵の役割を演じてくれるおかげで、国民の目を外に逸して国内の結束を維持することができる。もし、米国の経済制裁が解除されても経済が回復しなければ、国民の非難の矛先は自国のシステムの問題に向けられてしまう。

私としては、今回のトランプ政権が打ち出した方針でもう一つ注目すべきは、在米キューバ系住民の海外送金を継続して認めた点だと思います。米国だけで100万人以上、全世界では200万人近くいると言う海外居住者からの送金は、今やキューバの経済を支える生命線の一つになっています。食糧や石油を始め生活必需品の多くを輸入に頼るキューバにとって、外貨準備を増やすことは至上命題です。また、月々の食料配給と「国家公務員」としての僅かな給料では、もはやまともな生活ができなくなっている多くのキューバ国民にとって、海外からもたらされるドルは生き延びるために不可欠です。海外のキューバ系住民の多くは、母国に親族や友人を残しており、キューバの政権を憎んでいても、キューバで生きる人々の息の根を止めることは望んでいません。

互いに罵り合いながらも、米国による生かさず殺さずの政策が続けられている両国の関係は実に複雑です。最近は、相変わらず品薄のキューバのスーパーに、米国の象徴であるコカコーラがたくさん並べられているのを見て、何とも複雑な気分になりました。

 

よろしければ、こちらの記事もご覧ください。

キューバは、旅行するのと生活するのでは大違いの国です。(その1)

 

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