「レヴェナント:蘇えりし者」(原題 The Revenant)の感想と評価 : 2016年のアカデミー主演男優賞はレオナルド・ディカプリオで決まりです。

 

日本では4月22日に公開予定の「レヴェナント:蘇えりし者(Revenant)」は、パナマでは先週から公開されています。例によってパナマで一番いい映画館「Cinepolis Vips」に行き、フラットな席でリラックスしながら観てきました。

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2016年の第88回アカデミーの作品賞、監督賞、主演男優賞他にノミネートされている映画ですが、レオナルド・ディカプリオの渾身の演技は前評判通りであり、主演男優賞は彼で決まった感があります。すでに発表された第73回ゴールデン・グローブ賞では、この映画は主演男優賞以外に作品賞と監督賞を獲得していますが、こちらの方はライバルが多くて微妙なところです。

日本語版の予告編はこちらです。

 

映画.COMからあらすじを引用させていただきます。

レオナルド・ディカプリオと「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」でアカデミー賞を受賞したアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督が初タッグを組み、実話に基づくマイケル・パンクの小説を原作に、荒野にひとり取り残されたハンターの壮絶なサバイバルを描いたドラマ。主演のディカプリオとは「インセプション」でも共演したトム・ハーディが主人公の仇敵として出演し、音楽を坂本龍一が担当。撮影監督を「バードマン」に続きエマニュエル・ルベツキが務め、屋外の自然光のみでの撮影を敢行した。狩猟中に熊に襲われ、瀕死の重傷を負ったハンターのヒュー・グラス。狩猟チームメンバーのジョン・フィッツジェラルドは、そんなグラスを足手まといだと置き去りにしたばかりか、反抗したグラスの息子も容赦なく殺してしまう。グラスは、フィッツジェラルドへの復讐心だけを糧に、厳しい大自然の中を生き延びていく。

 

以下は、映画を観てのコメントです。写真はこのサイト(IMDb)から引用させていただきました。

♥この映画のオリジナルのタイトル「The Revenant」、さらにスペイン語のタイトル「El Renacido」とは「亡霊」という意味です。死んだはずの人間が蘇ったという意味で、日本語のタイトル「蘇えりし者」もなかなかいい訳だと思います。「実話」に基づいた小説を原作にしているそうですが、いくら復讐の執念に燃えているとはいえ、過酷な自然条件の中を瀕死の重傷を負った男が途中で何回も本当に死にそうになりながら300キロも移動するのは実話ではないと思います。でも、そこは映画の世界、エンターテインメントと割り切れば十分に楽しめます。

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♥この映画は、舞台となっている1820年代のアメリカの時代背景を知れば、さらに楽しめます。アメリカは1776年にイギリスから独立したものの、国としてのまとまりはなく、未開の西部に向けて開拓が続いています。アメリカの独立を助けたフランスも権益の拡張を狙っています。各地の先住民(インディアン)は自分たちの伝来の土地と暮らしを守ろうと必死になっています。新大陸で一攫千金を企む連中も暗躍しています。この映画の主人公でディカプリオが演じるヒュー・グラスは、先住民の妻との間に子供(ホーク)を儲けますが、彼らが住んでいた集落は賊(フランス軍?)に襲われ、最愛の妻が殺害されます。彼がなぜ先住民と暮らしていたのか、理由は語られません。グラスは男手一つでホークを育て、やがて成長した息子と共に、獣の毛皮を求めて狩りをする白人たちの狩猟チームに加わります。グラスとホークの会話はすべて先住民の言葉です。獲物の解体処理をするこの狩猟チームのキャンプを、娘を別の白人グループに奪われたらしい酋長が率いる先住民(アラカラ族)の一団が襲い、ハンター達が収穫した多くの毛皮を残して命かながら逃げるシーンから物語が展開します。キャンプにどこからか矢が飛んできて、ハンター達が次々と倒れていくシーンは恐怖感満載で臨場感があり、この映画の最初の見せ場です。

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♥この以降のストーリーは、上記に引用したあらすじの通り単純です。真冬の荒野を逃走する途中で、グラスは熊(グリズリー)に襲われ瀕死の重傷を負ってしまいます。同じ狩猟チームのメンバーであるジョン・フィッツジェラルドは、手下の少年と共にグラスの面倒をみながらチームに遅れて移動するリスクを取る代償として、チームのリーダーであるヘンリーから後の報奨を約束されます。ところがフィッツジェラルドはグラスを足手まといとして置き去りにし、反抗した彼の息子ホークも殺してしまいます。墓穴に埋められながらも奇跡的に一命をとりとめたグラスは、自分を見捨てた上に最愛の息子を殺したフィッツジェラルドに復讐を果たすべく、「蘇りし者(The Revenant)」となって過酷な大自然の中をサバイバルと復讐の旅をします。この映画に批判的な人は、なぜそんなに単純なストーリーを長時間かけて描くのかという見方をするかも知れません。でも、2時間半に及ぶドラマですが、スリリングなストーリーで観客を引っ張っていく展開は、エンターテインメント作品として極上の出来栄えです。特殊なカメラを使用し野外の自然光だけで撮影した臨場感あふれる映像、さらに坂本龍一が担当した重厚感のある音楽も素晴らしいです。ただ、全編に渡って血生臭いシーンの連続のため、気持ちが悪くなったり、嫌悪感を催す人もいるでしょう。暴力や残虐な内容の映画が嫌いな人も、この映画に厳しい見方をするかもしれません。元々「R」指定の映画であり、パナマでは12歳以上の年齢制限がありますが、おそらく日本でも何らかの制限が付くと思います。

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♥この映画では、グラスの仇であるフィッツジェラルドを演じるトム・ハーディもアカデミー助演男優賞にノミネートされています。チームのリーダーであるヘンリーに嘘の報告をしてちゃっかり報奨金をもらい、チームの金庫から金を盗んでテキサス方面に逃亡し、最後は荒野で壮絶な討ち死にをするなど、最後まで悪役として好演しています。トム・ハーディと並んで好演しているのは、フィッツジェラルドの手下の少年役を演じるウィル・ポールターという英国の若手俳優です。仲間のグラスを見捨てた良心の呵責と、フィッツジェラルドについて行っていいのかという心の葛藤を、演技の中でよく表現しています。

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♥この映画では、大自然の中でのサバイバルの手段がいくつも出てきます。火の起こし方、川の魚の取り方、火や薬草を使った傷の癒し方、木の破片を使った簡易シェルターの作り方…。一番の極め付けは、雪の荒野に放り出されたグラスが、追手に気づかれないように火を使わずに一晩の暖をとる方法です。なんと死んだ馬の腹をナイフで切り開き、中の内臓を引き出して、自分はその隙間に入って寒さを防ぎます。重傷を負っている彼に、馬の大きな内臓を引き出すほどの力が残っているのは不思議ですが…。ともかく、この映画は衝撃的なシーンの連続です。インパクト順で言うと、一番目はグラスが熊に襲われて重傷を負いつつもこれを射止めるシーン、二番目は死んだ馬の中に入って寝るシーンです。三番目は飢えをしのぐために獣の肉を生で食べるシーンでしょうか。

♥この映画の主要な登場人物はすべて男性です。回想で登場する主人公グラスの妻とフランス人の狩猟チームに囚われたアンカラ族の酋長の娘だけが女性です。男だけの世界を描いた映画というのは、最近亡くなったデビット・ボウイも出演していた1983年公開の「戦場のメリークリスマス」以来、本当に久しぶりに観ました。極限の状況の中での男の執念とサバイバルの姿を描いたこの作品は、レオナルド・ディカプリオのこれまでのイメージを覆す異色の作品ですが、日本ではどのように評価されるでしょうか…。

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